クリニックの開業に向けて、事業計画の策定や不動産選びなどの準備を進めていきましょう。中には人口減少*1 の影響を受け、運営が厳しい地域もあるかもしれません。いつまでに何をしておけば良いのか、事前にある程度の目安を把握しておくことが重要です。
今回は、クリニック開業の手順と注意点について解説します。
*1 総務省|平成30年版 情報通信白書|人口減少の現状
クリニック開業の手順とスケジュールの目安
まずは、クリニック開業に至るまでの手順やスケジュールを確認していきましょう。
開業までの期間
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内容
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12〜18カ月前
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事業計画の策定
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7〜12カ月前
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不動産選びと資金調達
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4〜6カ月前
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内装と導入機器の決定
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1〜3カ月前
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スタッフの採用と宣伝
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1カ月前
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各所申請とスタッフ研修
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(1)事業計画の策定
開業予定の1年〜1年半前から準備を始めます。その中でも基盤となる事業計画をきちんと練ることは大切です。事業計画では以下のことを決めていきます。
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開業地
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開業形態
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コンセプト
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開業のタイミング
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融資について
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地域に求められるクリニックを開設するためには、開業地域の調査を行った上でコンセプトを立案しましょう。
開業のタイミングも重要です。日本医師会総合政策研究機構のデータ*2 によると新規開業の平均年齢は41.3歳で、勤務医として経験を蓄積した上で自身のクリニックを持つことが一般的といえます。特に専門医を取得したのちに開業することで、確かなスキルがあることを患者に提示できます。
また、日本政策金融公庫の2021年度の調査*3 では開業をする方の平均年齢はやや右肩上がりであることがわかります。その背景には医師の高齢化も関係しているでしょう。クリニックの経営は心身の負担が大きいです。高齢となってから開業する場合、そうしたリスクの影響を受けやすくなる点に注意してください。
このほか、金銭面についても計画をすすめましょう。
クリニックの開業には多大な資金が必要となるため、金融機関からの融資は必須です。資金調達のしやすさや返済期間などを見据え、現実的な融資を選択しましょう。新たにクリニックを開設するのか、もともとあったクリニックを継承するのかによっても必要となる予算は異なります。
*2 日本医師会総合政策研究機構 | 開業動機と開業医(開設者)の実情に 関するアンケート調査
*3 2021年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫
(2)不動産選びと資金調達
ある程度計画が定まったら、いよいよ不動産選びと資金調達をすすめていきます。土地や物件の選定と金融機関との借入交渉を同時進行できると良いでしょう。
不動産選び
まず、クリニックを開業する土地や物件を決めます。内装の決定や工事、医療機器の搬入など、土地や物件の決定後もやらなければならないことはたくさんあります。そのため、不動産関係は遅くともクリニック開業の半年前までには済ませておきたいところです。
開業するエリアにおいては、クリニックのコンセプトや想定する患者の特徴を踏まえて選びましょう。都心や駅に近い土地では、アクセスが良く集客がしやすいメリットがある反面、何かと運用費がかさみやすく出費が増えるデメリットがあります。一方、郊外の場合は競合クリニックが少なく初期費用や運用費を抑えやすいメリットがあるものの、人口が少なければ患者が集まらないリスクもあります。
資金調達
金融機関に問い合わせをおこないます。
その際、クリニック開業に必要な初期投資はもちろんのこと、維持費や管理費も含めて具体的な金額を伝えられるように準備しておきましょう。
(3)内装と導入機器の決定
続いて、内装と医療機器を決めます。医療機器、内装の順で決めることをおすすめします。
医療機器は、開業の時点でどこまでそろえておく必要があるのか、開業後に導入していくものには何があるのかなど、具体的に検討しておきます。
開業時の段階では必要最低限の医療機器にとどめておき、クリニック経営がある程度軌道に乗ってから、その他に必要な医療機器を順次導入していくという方法がおすすめです。
レントゲンやCTなど大きな装置を入れる場合には、内装を広めの設定にしたり、強度のある床にしたりと、考慮しなければならないポイントがあります。医療機器の選定後に内装の案を固めていきましょう。
(4)スタッフの採用と宣伝
ここまで開業準備がすすめば、いよいよスタッフの採用やクリニックの宣伝を行います。
スタッフの必要数は診療科や診療内容、診療時間などにより異なりますが、クリニック開業の3〜4ヵ月前からは募集をかけ始めます。1ヵ月前にはスタッフが決定し、研修や開業準備が進められることが理想的です。
スタッフの募集に際しては、求人サイトへの掲載や人材紹介会社への依頼など、ひとつの方法に絞らず多方面から周知しましょう。
この時期には、クリニックの宣伝も積極的に行ってください。
チラシやホームページの作成が効果的ですが、自分やスタッフでおこなうのはなかなか難しく、時間もかかってしまうため、広告代理店やwebデザイン業者などへの外注がおすすめです。
(5)各種申請とスタッフ研修
クリニック開業の準備も終盤です。スタッフの採用や宣伝まで整ったあとは、開業にむけて各種申請とスタッフ研修を行います。
クリニック開業に必要な申請は次のとおりです。
【保健所】
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診療所開設届
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診療用X線装置備付届
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麻薬管理者・施用者免許申請 など
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【地方厚生局】
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保健医療機関指定申請書
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診療料の施設基準等に係る届出書 など
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この他、消防署や税務署などでの手続きも必要となるため、計画的におこないましょう。
スタッフ研修では、クリニックの基本方針や理念の共有はもちろんのこと、勤務時間やシフト、労務管理、日々の業務の遂行方法に至るまで細かく伝達しておく必要があります。
場合に応じてe-ラーニングや資料を活用し、スタッフが困らないように整備しましょう。
クリニック開業の注意点は3つ!
クリニック開業における注意点は以下の3つです。
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エリア調査をおこないターゲットを明確にする
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設備費や人件費などの初期費用を抑える
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コンサルタントや税理士に相談できる体制を整える
順に解説します。
エリア調査をおこないターゲットを明確にする
クリニックの開業エリアについて徹底的に調査し、ターゲットを絞り込みましょう。
この作業が成功のカギだといっても過言ではありません。
対象の年齢層や競合クリニックについて分析し、エリアに合わせた展開をしつつ、差別化を図り専門性をアピールできると良いでしょう。地域住民に愛されるクリニックとなるよう、コンセプト作りにも力を入れてみてください。
設備費や人件費などの初期費用を抑える
クリニック開業には膨大な費用がかかります。
開業後も、経営がすぐに軌道に乗るわけでありません。設備費や人件費などの初期費用はできる限り抑えられるよう工夫しましょう。
コストダウンのためには設備をリースすることもおすすめです。医療機器は高額なものも多く、購入すると初期費用が膨らむリスクがあります。
人員に関しても「足りなくならないように」と不安になることもあるかもしれませんが、必要以上に雇ってしまうと人件費が予算オーバーとなってしまいます。
適切な採用、そして配置を検討しましょう。
コンサルタントや税理士に相談できる体制を整える
クリニックの開業にあたっては、コンサルタントや税理士、社会保険労務士など専門家の意見を聞きながら進めることをおすすめします。開業準備についてはもちろんのこと、経営や労務管理に関するアドバイスを受けることで、開業後のクリニックを安心して運営することができるでしょう。
クリニック開業の成功のために専門医を取得しよう
クリニック開業を成功させるためのひとつの手段として専門医を取得する方法があります。ここでは専門医がクリニック開業にどのように関わるのか解説します。
専門医がクリニック開業に効果的な理由
専門医の取得がクリニック開業に効果的な理由は次のとおりです。
クリニックの宣伝や広告で専門医であることをアピールできます。
専門医であれば、医師としてより専門的な知識や技術を習得している証明となるため、患者からの信頼度は上がるでしょう。またその診療技術の結果、一度来院した患者さんに満足感を与えることができれば、かかりつけ医として通い続けてくれることにもつながります。専門医取得は、クリニック開業に大変効果的です。
専門医試験の対策はドクターズスタディにおまかせ
開業準備と専門医取得を同時にすすめるのは時間的にも気持ち的にも難しいことがあるかもしれません。そこでおすすめなのが「ドクターズスタディ」の活用です。
ドクターズスタディは、医学生や医師の学習をサポートしています。専門医試験に自己学習で臨むとなると、2018年より専門医制度が一新されたことにより問題集やテキストが少なく悩んでしまいますが、ドクターズスタディでは新専門医制度に対応した映像講義が用意されています。
より専門医に特化した問題で学習ができるため、開業の準備を進めながら、隙間時間を使った効果的な勉強が可能です。
クリニック開業の際にはドクターズスタディを検討してみてください。