2018年からスタートした新専門医制度では、”初期研修を終えた専攻医(後期研修医)は、専門医取得を目指して専門領域の研修プログラムに参加すること”が求められます。
後期研修プログラムは二段段階制になっており、19の基本領域における専門医資格を取得した後、サブスペシャリティ領域に進んでより専門性の高い分野の理解を深めます。将来、開業医になることを目指している方はサブスペシャリティ領域の専門医資格取得を目指すことがおすすめです。
今回は、専門領域を選ぶ上で参考になる「開業しやすい診療科」を紹介します。開業時のポイントも紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「開業しやすい≒増えている科」最近の診療科数の増減を見比べよう
開業のしやすさを決める要因はさまざまですが、近年の診療科数の増減を見て、増えている診療科は開業しやすいと捉えることができるでしょう。診療科数の増減は厚生労働省の医療施設調査を参考に、2017年から2020年の医療施設数の推移から確認します。
診療科数が増加傾向にある診療科
下の表は2017年から2020年にかけて診療科数が増加した28科の診療科をまとめたものです。
|
2017年
|
2020年
|
増減の率
(2017年比)
|
呼吸器内科
|
2,749
|
2,770
|
1%
|
循環器内科
|
3,964
|
3,997
|
1%
|
腎臓内科
|
1,187
|
1,379
|
16%
|
脳神経内科(神経内科)
|
2,512
|
2,570
|
2%
|
糖尿病内科
|
1,424
|
1,596
|
12%
|
血液内科
|
640
|
721
|
13%
|
皮膚科
|
3,053
|
3,054
|
0%
|
アレルギー科
|
442
|
445
|
1%
|
リウマチ科
|
1,303
|
1,382
|
6%
|
感染症内科
|
145
|
170
|
17%
|
精神科
|
1,740
|
1,763
|
1%
|
心療内科
|
629
|
632
|
0%
|
呼吸器外科
|
976
|
1,019
|
4%
|
心臓血管外科
|
1,128
|
1,166
|
3%
|
乳腺外科
|
915
|
1,039
|
14%
|
消化器外科
|
1,699
|
1,806
|
6%
|
泌尿器科
|
2,829
|
2,862
|
1%
|
脳神経外科
|
2,581
|
2,612
|
1%
|
形成外科
|
1,364
|
1,430
|
5%
|
美容外科
|
121
|
122
|
1%
|
小児外科
|
376
|
398
|
6%
|
産科
|
186
|
197
|
6%
|
婦人科
|
851
|
870
|
2%
|
リハビリテーション科
|
5,557
|
5,640
|
1%
|
麻酔科
|
2,727
|
2,758
|
1%
|
病理診断科
|
885
|
930
|
5%
|
臨床検査科
|
231
|
241
|
4%
|
救急科
|
714
|
812
|
14%
|
ここからさらに増減の率が「5%増以上」と「クリニックに向いている診療科」を抜き出すと以下のようになります。
|
2017年
|
2020年
|
増減の率
(2017年比)
|
腎臓内科
|
1,187
|
1,379
|
16%
|
糖尿病内科
|
1,424
|
1,596
|
12%
|
血液内科
|
640
|
721
|
13%
|
リウマチ科
|
1,303
|
1,382
|
6%
|
感染症内科
|
145
|
170
|
17%
|
乳腺外科
|
915
|
1,039
|
14%
|
消化器外科
|
1,699
|
1,806
|
6%
|
形成外科
|
1,364
|
1,430
|
5%
|
小児外科
|
376
|
398
|
6%
|
産婦人科
|
186
|
197
|
6%
|
形成外科と産婦人科は19の基本領域ですが、他のすべての診療科は内科・外科それぞれのサブスペシャリティ領域に当たります。
診療科数が減少傾向にある診療科
診療科数が減少傾向にある診療科は以下のとおりです。
|
2017年
|
2020年
|
増減の率
(2017年比)
|
内科
|
6,785
|
6,640
|
-2%
|
消化器内科
|
4,012
|
3,986
|
-1%
|
小児科
|
2,592
|
2,523
|
-3%
|
外科
|
4,574
|
4,468
|
-2%
|
気管食道外科
|
85
|
84
|
-1%
|
肛門外科
|
1,188
|
1,178
|
-1%
|
整形外科
|
4,924
|
4,902
|
0%
|
眼科
|
2,414
|
2,376
|
-2%
|
耳鼻咽喉科
|
1,966
|
1,962
|
0%
|
産婦人科
|
1,127
|
1,094
|
-3%
|
放射線科
|
3,375
|
3,332
|
-1%
|
減少しているとはいえ、1〜3%の範囲である事がわかります。減少傾向にある診療科は、診療数が多いことで飽和状態になっていると捉えることもできます。
このことから、減少傾向にある診療科のクリニックを開業しても、既にライバルとなる多くのクリニックがあり、集客などの面で経営が困難な可能性もあるでしょう。
参考:
厚生労働省の医療施設調査2017
厚生労働省の医療施設調査2020
開業しやすい診療科と開業時に必要なポイント
ここからは、診療科の増加率とその他のポイントから「開業しやすい診療科」を3つ紹介していきます。
開業時に必要なポイントも紹介しますので、専門領域の選択に悩んでいる方や、開業時に必要なことを事前に知っておきたい方はぜひ参考にしてみてください。
腎臓内科(≒人工透析内科)
|
2017年
|
2020年
|
増減の率
(2017年比)
|
腎臓内科
|
1,187
|
1,379
|
16%
|
先ほどの表から、腎臓内科は2017年の1,187件から2020年の1,379件へと192件増加し、16%と高い増加率であることがわかります。腎臓内科は、もともと診療科数が多い上で高い増加率を誇るのが特徴です。
日本透析医学会*3では、透析医療の患者数について
日本国内では、毎年3万人を超える新たな人々が尿毒症のために透析療法を始めており、透析患者の総数は実に30万人を超えている。これは、国民の400人に1人、高齢者に限って言うなら100人に1人の割合。
と述べています。
実際のデータの増加率と日本透析医学会の見解から考えて、超高齢化社会の日本では、腎臓内科はますます需要の高い領域となるでしょう。そのため、安定したクリニック経営をおこなえる可能性が高い腎臓内科は「開業しやすい診療科」であるといえます。
*3 https://www.jsdt.or.jp/public/2123.html
腎臓内科(≒人工透析内科)の開業ポイント
●人工透析が必要になる患者を紹介してもらえる病院や糖尿病内科クリニックの近くに開業する
●高齢者の患者が多いため、階段を避けるなどのクリニックの設備を整える
開業ポイントとしては、患者を集客しやすい立地と、院内の設備が挙げられます。
糖尿病内科
|
2017年
|
2020年
|
増減の率
(2017年比)
|
糖尿病内科
|
1,424
|
1,596
|
12%
|
糖尿病内科も、2017年から2020年にかけて124件増加し、12%と高い増加率であることがわかります。
糖尿病患者は、厚生労働省が「我が国の糖尿病患者数は生活習慣と社会環境の変化に伴って急速に増加している」と警鐘を鳴らすほど増えています*4。
患者数の多さから、安定してクリニック経営をおこなえる可能性が高いと言えるでしょう。
*4 https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b7.html
糖尿病内科の開業のポイント
●生活習慣病の発症リスクが高いビジネスパーソンが多い地域での開業が有利
●患者は糖尿病の合併症で白内障や緑内障などの網膜症を引き起こしている方や、肥満などが原因で足の障害を負っている方が多いので、バリアフリー構造にする
●食事療法を指導できる管理栄養士を雇う
上記で挙げているほか、糖尿病内科の開業のしやすさのポイントには開業資金があまりかからないことがあります。
糖尿病の治療は運動療法や食事療法、薬物療法がメインとなるので高額医療設備や高額医療機器を必要としません。開業資金が多くかからないことは、開業のしやすさの大きな利点となるでしょう。
リハビリテーション科
|
2017年
|
2020年
|
増減の率
(2017年比)
|
リハビリテーション科
|
5,557
|
5,640
|
1%
|
リハビリテーション科は、2017年から2020年で1%の増加率ですが、診療科数が内科に次ぐ5,557件であることが特徴的です。内科は増加率が減少していますが、リハビリテーション科は需要が大きいうえに増減の比率が増えているので開業しやすい診療科といえるでしょう。
リハビリテーションを必要とする患者の多くは高齢者であるため、2025年には「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者に当たる日本では、ますますリハビリテーション科の需要が高まることが予測できます。
リハビリテーション科の開業ポイント
●歩行練習が室内でできるくらいの広さのあるスペースが必要
●身体や精神に障害をお持ちのすべての方のリハビリをサポートできるよう理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を雇用する
●患者を紹介してもらえるよう、形成外科のある病院や老人ホームの近くに開業する
リハビリテーション科では、リハビリをサポートできるスタッフの採用も非常に重要です。
このほか、患者がスムーズに歩行を行えるよう、広い敷地に開業するなど立地も非常に重要となります。
開業を目標に確実にクリアしたい!おすすめの専門医試験対策方法
開業しやすい診療科には、サブスペシャリティ領域の専門医資格を有していなければならない診療科が多くありました。専門医資格を取得していることで医師としてより信頼され、集客にも繋がるためです。
では、専門医資格取得に向けて試験対策はどのように行えばよいのでしょうか。ここでは最適な試験対策方法を紹介していきます。
各診療科の学会が出している学会誌をチェックする
新専門医制度下の専門医試験では、試験問題に臨床的な応用力を問う問題を多く出題するようになりました。臨床の知識を蓄える上で役立つのが各学会が発行している「学会誌」です。学会誌には、各症例の基本的な知識から詳細な記録が記されています。事細かにチェックして、臨床問題を突破できる知識を蓄えましょう。
ドクスタを利用する
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ドクスタのおすすめポイントを紹介!
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「分析力に驚くはず」過去のデータから出題頻度の高い問題を解説
ドクスタは的中率の高いテキストを作成するために、学会の最新情報を詳細にチェックしたり、受験者への聞き取り調査をおこなったりしています。
そのため受講者の方は、必要な箇所だけを効率よく学ぶことができます。日々診療で忙しい医師の方や、短期集中で知識を吸収したいと考える方にとって強い味方となるでしょう。
研修医プログラムもサポート「初期研修医がつまずくポイントを徹底解説」
ドクスタでは、後期研修に向かう前の段階の、初期研修医のサポートもしています。初期研修医向けの講義動画では、初期研修医がつまずくポイントを抑えていますのでぜひ活用してみてください。
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まとめ
開業しやすい診療科には、診療科の増加率や高齢化などの社会背景から見て、「腎臓内科」「糖尿病内科」「リハビリテーション科」が挙げられます。これらの領域は需要が高いため、開業してから経営難に困ることは少ないといえるでしょう。開業時のポイントなどもチェックして、どの領域が自分に合っているのか参考にしてみてください。
開業をする上では、専門医試験の取得が条件となるケースもあります。新専門医制度下の専門医試験を確実にクリアしたい方は、わかりやすい講義動画と的中率の高いテキストが魅力のドクスタで試験対策をしてみてはいかがでしょうか。