記事作成日:2023/01/10

記事更新日:2023/11/01

女医のキャリアは出産や育児で止まってしまう?転職や復職についても解説

女医の割合が年々増加し、2018年時点で全医師数の21.9%を占めるのに伴い、女性特有のキャリアの悩みも浮き彫りとなってきました。特に医療現場における慢性的な長時間労働や夜勤・当直といった不規則な勤務形態は、二次的問題につながる大きな課題です。
今回は女医のキャリア形成でよくある悩みや事例、長く働きやすい診療科などを解説します。

参考:厚生労働省『女性医師キャリア支援モデル普及推進事業の成果と今後の取組について』

女医がキャリア形成で抱えやすい悩みとは

女医の就業率は30代前後で一度大きく落ち込み、50代後半にかけて緩やかに回復していく傾向があります。ここでは抱えやすい悩みと併せて、30代前後でキャリアを中断する女医が多い理由を確認していきましょう。

家事や育児との両立が大変

わが国における家事や育児に関する社会問題は、女性医師のキャリア形成を考える上でも重要な要素と言えるでしょう。
2020年のデータでは、女性が男性の2倍以上の時間、夫婦間の家事労働と育児に従事していることがわかっています。加えて、2016年に医師を対象にして実施された調査では、診療や診療外、当直の待機時間を含めて週60時間以上病院に勤務している女医が28%という結果になりました。さらに週80時間以上の過重労働者が7%と、長い時間業務に拘束されていることがわかります。
もちろん家庭内での協力体制が確立されているご家庭もある一方で、仕事と育児や家事を両立することが難しいケースがあるのも現状です。

参考:令和元年内閣府委託調査『家事等と仕事のバランスに関する調査』

 

出産や育児で女医のキャリアはどう変化するのか

女医の約70%が出産、次いで約40%が子育てを理由に離職や休職をすることからも、ライフイベントはキャリア形成に大きな影響を与えるといえます。
産前休業は出産予定日の約6週間前(多胎妊娠の場合14週前)から取得可能であり、出産翌日から8週間は就労不可が原則です。妊娠の経過次第では長期間の入院が必要となるケースもあり、休職は避けられません。キャリア形成の途中で休職してしまうことをデメリットに感じる方もいらっしゃいますが、出産や育児の経験は医師として大きく成長させてくれるでしょう。例えば妊婦の心情や産後のメンタルケアなど、より患者に寄り添うことができるようになったり、医師として新しい分野に興味を持つきっかけとなったりします。

 

事例から知る女医のキャリア形成について

先述のように出産や育児、介護といった様々なライフイベントによって女医のキャリアはカタチを変えていきます。ここでは、長期間の休職後に再研修を受けて現場復帰を目指す方など、キャリア形成を諦めない女医の活躍を紹介します。

事例1:育児と両立しながら女医として活躍

産婦人科医として大学院に在籍していた女性医師Aさんは子どもに重度の持病があることを知り、子育てを優先しました。その上で、子育てが落ち着いたら最前線で働くことを目標とし、知識面などでブランクを生じさせないために短い時間でも現場と関わることを大切にしています。ペースを落としてでも勤め続けることを選んだ彼女は、自宅近くのクリニックや以前の勤務先で週1回ないしは月1回のスポット勤務をしています。

参考:女性医師支援センター『いつか再び最前線で働きたいと思いながら、週1日の勤務を続けています。』

事例2:20年以上の子育てを経て常勤へ復帰

育児中は臨床以外の業務や医療教育分野で非常勤として働くことを選んだ女性医師Bさん。現場から20年離れた結果、子育てがひと段落し「医師としてフルで働きたい」と考えたときには知識や技術面でブランクが生じていました。知識や手技をアップデートするためには学び直しが必要だと考え、
50歳を過ぎてからの再研修ではあるものの、現場で活躍することを目標に女性医師としてのキャリアを再スタートさせました。

参考:女性医師支援センター『50歳を過ぎてからの再研修。周りに助けられています。』

出産や育児を経た女医のキャリア形成は事例がまだ少ないものの、支援や制度は増えており、復帰がしやすい環境は整ってきています。そうした中で次に着目したい要素は診療科です。キャリアを重視する女医にとって診療科選びは大切な役割を持ちます。

 

厚生労働省の調査結果からみる各診療科の特徴

さてここでは、厚生労働省や日本医師会男女共同参画委員会をもとに、各診療科の特徴をみていきましょう。

※参考:
厚生労働省:女性医師キャリア支援モデル普及推進事業の成果と今後の取組について
日本医師会男女共同参画委員会:日本医師会男女共同参画委員会/日本医師会女性医師支援センター『女性医師の勤務環境の現況に関する調査報告書』

皮膚科

2014年の調査において、医療施設に従事している女性医師が最も多い診療科が皮膚科でした。他の診療科と比べると1ヶ月の宿直日数が少なく、時短常勤や非常勤という勤務形態を選択しやすい科です。育児や家事などによって、限られた時間での勤務を希望する女医にとって選びやすい診療科といえるでしょう。

眼科

2017年の『女性医師の勤務環境の現況に関する調査報告書』によると、眼科の1週間の実勤務時間数は、40時間以内に収まっている割合が72%と高い結果が出ています。
病院常勤勤務医の週当たりの平均勤務時間が51時間32分(全年代の女医対象)であるので、眼科は拘束時間が比較的少なく働きやすい診療科です。

麻酔科

麻酔科は皮膚科や眼科に次いで3番目に女医が選択しやすい診療科といわれています。皮膚科と同じく、1ヶ月の宿直回数が少ないという特徴があり、女医がライフステージに応じて自分のペースで働きやすい点が魅力です。

小児科

小児科に占める女医の割合は34.2%で、麻酔科に次いで選ばれている診療科です。1ヶ月での宿直回数は少なくありませんが、翌日も通常勤務が多い他の診療科に比べると翌日半休等が取得しやすい体制となっています。育児の経験があればより患者に寄り添うことができるほか、反対に小児科での経験を自分自身の子育てに活かすことも可能です。

産婦人科

産婦人科も女医にとって選びやすい科の1つです。皮膚科や眼科などと比べると宿直日数も多く、手術などもあるので勤務時間は短いとはいえません。しかし、実際に出産という場面に立ち会う職場なため、出産や育児に対する周囲からの理解が得やすく、その経験が実務に活かせるという利点があります。

 

女性医師のキャリア形成のポイント

ここまで抱えやすい悩みや働きやすい診療科について解説してきました。ここからは女医が医師として、女性として、より充実したキャリアを築くために知っておきたいポイントをご紹介します。

最も重要なことは「譲れない条件を決めること」

キャリア形成の土台となる診療科選びで最も重要なポイントは「譲れない条件を決めること」です。
家族との時間を大切にすること、医師としてキャリアアップし続けること、その両方の道を進むこと。自分にとって1番に大切にしたいことは何か考えましょう。そして気をつけたいのは「自分にとって譲れないポイント」は、他人と同じものでなくても良いことです。各々のライフステージによって譲れない条件は変わっていきます。
今の自分にとって、本当に大切にしたいものを優先しながらキャリア形成の計画を立てましょう。

産業医として働く選択肢もある

女医が休職や離職した後、病院の第一線に戻るケース以外に産業医として働くパターンも増えています。産業医とは、企業において労働者の健康を保つために専門的な立場から指導や助言を行う医師を指します。産業医の資格を取得する条件は都道府県医師会などが実施する基礎研修50単位以上を修了していること、もしくは産業医科大学などの産業医学基本講座を修了していることです。
なお大学での基本講座を受講する方法の場合、資格取得までに約2〜5ヶ月間通学する必要があります。また一般的なルートではありませんが、労働衛生コンサルタントという労働衛生分野における最高峰の国家資格を取得した後に産業医になるというケースもあります。合格率は筆記30%前後、後述45%前後といわれています。
こうした方法で取得した産業医の資格はずっと使えるため、取得し直す必要がない点が魅力的です。ライフイベントによって将来が予測しづらい女医にとっては、選びやすい選択肢の1つでしょう。

女医のキャリアを諦めないために!ドクターズスタディの学習講座

出産や子育て、介護といった理由で長く医療の現場を離れると、どうしても知識や技術面でブランクが生じてしまいます。
女医としてのキャリアを考え、復帰や継続を希望している際にはドクターズスタディの学習講座がおすすめです。ドクターズスタディは40年にわたり医師国家試験と医学生のデータを分析してきたからこそ、比較的短い期間で的確な知識を提供できます。休職や離職を経て「また病院の最前線で働きたい」「産業医として復職したい」と考えている方は検討してみてください。

まとめ

女性医師のキャリア形成を考えるとき、勤務体制や周囲の理解などの課題がまだまだ多くあるのは事実です。しかし、女性だからといってキャリア形成を諦める必要はありません。自分にとって大切なものは何かしっかり考え、ライフイベントとのバランスをとりながらキャリアの幅を広げていきましょう。

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