記事作成日:2022/07/04

記事更新日:2024/03/04

透析専門医の試験対策は?出題形式や注意点を紹介!

透析専門医の資格認定試験には、どのような問題が出題されるのでしょうか。今回は透析専門医に求められる専門医像から、資格認定に向けた試験対策、出題形式や注意点についてご紹介していきます。

 

透析専門医の専門医像とは

まずは日本における透析専門医の必要性について透析患者の現状からチェックし、どのような専門医が求められているのか確認していきます。

 

透析専門医の必要性

日本の透析患者の総数は30万人以上で、毎年3万人以上が尿毒症(腎臓の働きが正常の10分の1程度まで著しく低下している末期腎不全の状態)により透析療法を開始しています。これは国民の400人に1人の割合に相当し、高齢者に至っては100人に1人が透析患者です。
この割合からもわかるとおり、透析治療を必要とする患者の存在は決して珍しくありません。近年は透析患者数の伸びが鈍化していますが、年々増加傾向にあり、2020年度は前年に比べて3,031人増加しました。

また世界的に見ても、日本の透析患者有病率はトップクラスであり、米国腎臓データシステム(United State Renal Data System: USRDS)の調べでは、透析患者の有病率が台湾に次いで第2位です。
以上のことから日本における透析専門医の必要性は非常に高いことがわかります。

 

日本透析医学会が求める専門医像

日本での需要が高いと考えられる透析専門医ですが、求められる専門医像に一致していなければ、需要を満たすことができません。そこで日本透析医学会の専門医像を参考に、どのような専門医が求められているのか解説していきます。

透析専門医には患者の合併症や偶発症に迅速に対応できる幅広い知識が求められます。透析患者は慢性腎不全のみならず糖尿病、高血圧など多くの既往症や全身合併症を有していることが多いためです。また延命治療である透析療法の導入期・維持期・終末期には常に倫理的問題が存在しているため、最善の治療とケアを提供できる専門医である必要があります。
日本透析医学会では、日本のすみずみまで透析専門医を浸透させていくことを目標にしているため、各地域においての透析医療の質向上に貢献できる専門医も必要とされます。透析患者が安心して、良質かつ安全な透析療法を受けられるように幅広い知識を持ってサポートできる専門医が、透析医療に求められる専門医像といえるでしょう。

 

透析専門医の認定・更新方法について

これまで日本における透析専門医の必要性や、求められる専門医像についてご紹介してきましたが、透析専門医になるにはどうしたらよいのでしょうか。
ここからは資格取得に際した条件、資格更新方法について説明していきます。

 

透析専門医の資格認定条件は?

専門医の資格認定申請には、以下の日本透析医学会の基準を満たす必要があります。
(以下日本透析医学会専門医制度規則より抜粋)

第8条  専門医は次の各項の資格をすべて満たす者であること.

1)日本国の医師免許証を有し、医師としての人格および識見を備えていること.
2)日本内科学会および日本外科学会において定められたいずれかの認定医または,専門医,日本泌尿器科学会,日本小児科学会および日本救急医学会において定められたいずれかの専門医,もしくは日本麻酔科学会において定められた指導医の資格を有し臨床経験5年以上を有していること.なお、初期研修医1年目は臨床経験に含めない.
3)本学会の専門医制度委員会の規定によって編成された研修カリキュラムに従い,学会認定施設において1年以上または教育関連施設において3年以上を含む通算3年以上を主として透析療法に関する臨床研修を行いかつ業績のあること.なお、勤務日数は、原則週4日以上を研修1年と認定する.ただし、週3日の勤務は、研修1年の4分の3に相当し、週2日の勤務は、研修1年の4分の2に相当する.週1日のみの勤務は研修期間として認めない.
4)本学会年次学術集会出席ならびに業績について30単位を満たしていること.
5)専門医認定の試験および審査において適格と判定され、専門医として登録を完了した者であること.
6)申請時において、本学会の会員歴3年以上であること.

(以下日本透析医学会専門医制度規則より抜粋)

(以下専門医制度規則施行細則より抜粋)

第5条 専門医を申請する者は別表に掲げる30単位を取得していること.
  2   上記単位には本学会年次学術集会参加1回以上を含むこと.
  3   業績については筆頭者として血液浄化法に関する発表1件以上行っており,かつ原著(基礎的・臨床的研究あるいは症例報告で共著でも可)を1編以上を含むこと.

透析専門医の資格更新時期は?

透析専門医は、5年に1回の資格更新に加え、更新要件として以下の要件をすべて満たす必要があります。

(以下日本透析医学会専門医制度規則より抜粋)

1) 専門医資格取得後引続き本学会会員であること.
2) 専門医認定証の有効期限の満了する日の前1年以内であること.
3) 当該認定期間5年のうちに別表に定められた所定単位を取得していること.
4) 病気、出産、その他止むを得ない事情により所定の単位に満たない場合は、更新の保留を申請する.保留期間は1年単位とし通算2年を限度として、,認定期間は有効期限の満了する日に保留期間を加えた年数だけ延期されるが、保留の期間中は専門医を呼称することは出来ない.なお、保留期間においては、セルフトレーニング問題を正答すること. 
5) 海外留学のため休会措置を受け、所定の単位に満たない場合は更新の延長を申請する延長の期間は4年を限度として年単位とし、認定期間は有効期限の満了する日に延長の期間を加えた年数だけ延期されるが、延長の期間中は専門医を呼称することは出来ない.
6) 専門医更新の審査において適格と判定され専門医更新者として登録を完了した者であること.

4)のセルフトレーニング問題は、2005年より資格更新条件として必須になりました。セルフトレーニング問題の解答用紙(マークシート方式)は、透析医学会に資料請求することで手に入れることができます。
解答後は、解答用紙を専門医制度委員会宛に郵送し、専門医制度委員会で行われる採点結果を待ちます。所定の正答率(2020年度は60%)を満たすことができたら単位認定証が送付され、研修単位の5単位が認定されるので専門医の資格更新をすることができます。

 

日本透析医学会専門医試験内容、合格率はどのくらい?

ここからは、日本透析医学会で行われた専門医試験の問題形式や出題内容、合格率についてご紹介していきます。

 

透析専門医試験の問題形式や出題内容

透析専門医の認定は、1)書類審査 2)客観式筆記試験 3)口頭試問試験の3つの段階を経た総合判定によって行われます。
2021年度も同様に、書類審査(症例要約のレポート評価)、筆記による客観式試験、口頭試問の総合判定で行われました。では、筆記試験と口頭試問の形式や出題内容について詳しく見ていきましょう。

【筆記試験】

筆記による客観式試験はマークシート方式で、100問/2時間の予定で行われます。
問題形式は正解肢1つ、誤答肢4つのAタイプ問題と、正解肢2つ・誤答肢3つのX2タイプ問題(正解肢を2つ選ばないと不正解)です。出題内容は広く腎不全の病態と診療、血液浄化療法に関する知識が問われます。

【口頭試問】

口頭試問は筆記試験終了後、各受験者10〜15分程度で複数の面接官によって問われる質問に答える形で行われます。
口頭試問の出題内容は、「腎不全の病態と治療」、「血液浄化療法」、「日常透析室業務全般」、「感染対策や医療倫理」など多岐にわたります。

 

透析専門医試験の合格率

2021年度、第32回の専門医試験は325名が申請し、310名(書類審査不適格6名、辞退7名、欠席2名)が客観式筆記試験・口頭試問試験に臨みました。
専門医試験小委員会や専門医制度委員会において症例要約、筆記試験、口頭試問の結果が検討され、259 名(申請者の83.5%)が適格者として認定されました。

参照:https://www.jsdt.or.jp/specialist/3415.html

 

透析専門医試験の対策方法

2021年度の合格率は80%程度と高めでしたが、しっかりとした対策を行い、確実に合格を手に入れることが大切です。これから紹介する透析専門医試験の対策方法を参考にしてみてください。

 

学会誌をチェックする

透析専門医の資格取得を目指している方は、透析医学会の学会誌をチェックしましょう。筆記試験と重ねて行う口頭試問は、腎不全の病態と治療、血液浄化療法、日常透析室業務全般、感染対策や医療倫理など多岐にわたる質問が出題されるので、学会誌の各症例を詳細に確認することが重要です。
日本透析医学会が発行している雑誌「日本透析医学会雑誌」はJ-STAGEからも閲覧可能です。出題される口頭試問を予想し、あらかじめ答えを用意しておくと良いでしょう。

 

2022年度以降の専門医認定試験上の注意を確認する

専門認定試験の注意点として、2022年度以降から適用される専門医資格認定に際した変更点があるのでいくつか紹介します。万全の状態で専門医資格取得を目指すには、変更点の確認は必要不可欠です。

 

施行細則第23条 症例要約のカテゴリーの改正に伴う変更点

専門医試験の受験には18症例の症例要約が必要ですが、2022年より症例要約のカテゴリーが一部改正されます。
具体的な変更点は以下のとおりです。

現行のD腹膜透析症例は改正後のA維持透析症例に含め、症例要約6例を提出する。
このうち、少なくとも血液症例1例および腹膜透析症例(含むCAPD)1例を含むことが必要である。
B慢性腎不全透析導入症例について、症例要約3例を提出する。血液透析症例および腹膜透析症例を含むことは可能だが、このうち、少なくとも血液透析症例は1例含むことが必要である。
Eバスキュラーアクセスカテーテル留置症例は一時的バスキュラーアクセスカテーテルだけでなく、長期留置カテーテル(カフ付きカテーテル)留置を行った症例でも可能である。

透析医学会ホームページより

学会発表・論文に関する注意点

透析医学会の年次学術集会における学会発表、透析医学会誌における論文はいずれも業績として認められますが、それ以外の学会発表・論文は、透析に関する発表に限られます。業績として認められる学会発表・論文の要点として示されているのは「維持透析患者を対象としたもの」、「維持透析の導入に関するもの」、「維持透析の透析アクセスに関するもの」、「 維持透析患者に対する腎移植に関するもの」です。

また日本透析医学会での発表・論文が掲載されてきた「年次学術集会」・「日本透析医学会雑誌」・「RRT誌」・「TAD誌」ですが、「TAD誌(Therapeutic Apheresis and Dialysis)は、2022年1月から日本透析医学会のofficial journalではなくなるため、2021年中に発行・受理されている論文のみが認められます。
透析専門医資格取得を目指している方は、提出する論文の確認を注意深くするようにしましょう。

透析医学会ホームページより

 

まとめ

世界第二位の透析患者数である日本では、透析専門医の需要が高まっています。
透析専門医は患者の合併症や偶発症に対応できる幅広い知識と、最善の治療を提供できるスキルを持ち合わせる必要があります。透析専門医として役立つ幅広い知識とスキルは、透析専門医試験に向けた学習でも身に付けることができます。

今回紹介した試験対策方法を参考に、透析専門医の資格認定、透析患者をサポートできる専門医を目指しましょう。

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