医師は7年目に差し掛かると、独立や転職をする方が多い傾向にあります。医師としての職務や生活に慣れてきて、「さらなる高みのために挑戦したい」「キャリアアップしたい」という意欲が増してくるのでしょう。
勤務医から開業医へとキャリアアップする場合、年収はどのくらい変化するのでしょうか。年収を増やすためだけに開業する医師は多くないでしょうが、開業を試みる上で年収を増やしたいと考えるのは当然の心理です。
今回の記事では、そんな開業医の年収事情について深掘りしていきます。また、開業医のメリット・デメリットも紹介するのでキャリアアップのために開業医を志している方はぜひ参考にしてみてください。
開業医と勤務医の年収
開業医と勤務医の年収を比較し、どのくらいの収入差があるのか最新のデータをもとに分析していきましょう。
ここで紹介する数字や金額は、中央社会保険医療協議会が2021年11月に公表した「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」から抜粋したものです。*1
*1 第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 | 中央社会保険医療協議会
勤務医の年収
まずは勤務医の年収を確認しましょう。勤務医として働かれている方は、ご自身の年収と照らし合わせてみてください。
また下の表では、病院長の年収も記載していますので開業医だけでなく、病院長というキャリアとの収入差も比較することができます。
【常勤の1人平均給料年額(年収)】
国立病院の病院長
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18,762,235円
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国立病院の医師(勤務医)
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13,239,799円
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公立病院の病院長
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21,535,517円
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公立病院の医師(勤務医)
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14,726,005円
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公的病院の病院長
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22,412,669円
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公的病院の医師(勤務医)
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13,841,103円
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社会保険関係法人の病院の病院長
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19,626,330円
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社会保険関係法人の病院の医師(勤務医)
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14,276,248円
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医療法人病院の病院長
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31,100,957円
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医療法人病院の医師(勤務医)
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15,062,173円
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勤務医の年収は1,300万~1,500万円で、医療法人病院(民間病院・私立病院)は国立病院や公立病院の勤務医の年収に比べて約200万円ほど高いことがわかります。安定した給与が補償されている勤務医のまま年収を上げたい方は、医療法人病院(民間病院・市立病院)での勤務が良いでしょう。
病院長の年収は病院の形態によって大きく差が見られます。医療法人病院の病院長は3,000万円以上、公立病院の病院長・公的病院の病院長は2,000万円以上、国立病院長・社会保険関係法人の病院長は2,000万円以下です。
このような年収の差は、病院の経営者(オーナー)であるか、雇われの身である通称「雇われ院長」であるかによって変わってきます。医療法人病院の病院長は病院の経営者(オーナー)であることが多いことから、年収が他の病院長よりも高い傾向にあります。
クリニック(診療所)の開業医と勤務医の年収
続いてクリニック(診療所)の開業医と勤務医の年収を紹介します。
【クリニック(診療所)の開業医と勤務医の年収】
入院診療がある診療所の院長
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29,820,038円
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入院診療がある診療所の医師
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11,931,775円
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入院診療がない診療所の院長
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29,655,019円
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入院診療がない診療所の医師
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11,967,655円
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クリニックには入院診療ありとなしがありますが、あり・なしによる年収差はそれほど大きくはありません。
しかし開業医と医師(勤務医)の年収差はとても大きく、クリニック院長は大体3,000万円なのに対し、クリニック勤務医は大体1,200万円です。
比較するとみえてくる「年収を増やすなら開業医」
ここまでの内容をまとめて、年収の多い順に並べました。
1位
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民間病院の病院長(≒オーナー)
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大体3,100万円
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2位
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クリニック院長(≒開業医)
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大体3,000万円
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3位
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公的病院の病院長
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大体2,000万円
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4位
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民間病院の勤務医
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大体1,500万円
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5位
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公的病院の勤務医
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大体1,400万円
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6位
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クリニック勤務医
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大体1,200万円
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勤務医よりもクリニックの開業医、病院のオーナー(捉え方によっては開業医)が高い年収を得ていることがわかります。
クリニックの開業は、病院のオーナーになるよりもスムーズなため、医師が「年収を増やしたい」と考えた際はクリニックの開業医になることが最短ルートになるでしょう。
開業医のメリットは?
開業医は勤務医と比較すると、年収については大幅なアップが期待できることがわかりました。このほかに、開業医になるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
理想とするクリニックを自分の裁量で運営できる
勤務医は上司の医師や病院長の方針に従わざるをえません。理想とする医療を提供したいと思っても、なかなか思い通りにいかず閉塞感を抱いたら、開業することが打開策となるでしょう。
勤務医はチーム医療の一員ですが、開業医はチーム医療のリーダーになることができます。自分の理想とする環境で理想とする医療を提供することは開業医になる上での大きなメリットといえるでしょう。
地域住民との繋がりや、やりがいを感じられる
地域医療に貢献している開業医は、病院の勤務医よりも地域住民とのつながりをより強く感じられるでしょう。
地域医療に貢献しているという実感を得られるのも、開業医のメリットです。
開業医のデメリットは?
ここまで開業医のメリットを中心にお伝えしました。
しかし、新たなキャリアへと挑戦する上ではデメリットを把握しておくことも大切です。ここからは開業医のデメリットについて見ていきましょう。
クリニックの開業当初は年収が低い
クリニックを開業するには、建物や土地の購入から始まり、医療機器や事務機器の購入などのために数千万円規模の開業資金が必要です。これらの費用は自己資金だけではまかないきれないため、銀行からの借り入れが必要となるでしょう。
そのため開業当初の年収は、借金の返済に多くが充てられるため勤務医時代より低くなることが予想されます。しかし「年収3,000万円の開業医」もこのつらい時期を乗り越え、安定した収入を得ています。
経営者としての能力が必要になる
開業医と勤務医の仕事を単純化するとこのようになります。
●開業医の仕事:医療と経営
●勤務医の仕事:医療
自身の理想とする医療を実現するためにクリニックを開業できたは良いものの、経営面に追われて医療体制が疎かになってしまうリスクがあります。
クリニックの経営には、雇用、人材育成、スタッフとのコミュニケーション、人心掌握、集患活動、売上と利益の確保、コストダウン、広告、広報、マーケティングなどが必要です。開業医にはこれらに対してバランスよく目を配る必要があります。クリニックの開業に踏み切るまでに、経営面の勉強もしておくと良いでしょう。
開業医として成功するには?
開業医として成功するには、上記でも述べたようにクリニック経営のスキルを身につけることが不可欠です。
ここでは、自身で経営面の勉強をおこなうことが難しい方や、他の対策方法を知っておきたいという方におすすめの方法を紹介していきます。
医療コンサルタントに経営面での相談をする
医療コンサルタントは医療機関の経営や管理上の課題を改善する策を考え、その実施を支援してくれるアドバイザーです。「初心者開業医」や「開業を志望する医師」の強い味方となるでしょう。
医療コンサルタントには大きく、有料と無料の2つのタイプがあります。
有料の医療コンサルタントは、コンサルティング業務を本業にしているため、クリニック開業を全面的にバックアップしてくれます。「手取り足取り」教えてもらえるイメージで、経営面に不安を抱えている方や開業が初めての方にはおすすめです。
しかし、100万円~200万円ほどのコンサル料がかかります。
無料の医療コンサルティングは、医療機器メーカーや、医療関連不動産を得意とする不動産会社がサービスとして提供しているものです。
コンサルティング料は無料ですが、自社の医療機器や不動産についてネガティブなことは伝えず、他社の医療機関や不動産についてのポジティブな意見も聞けないでしょう。
①無料のコンサルティングを受けて、クリニック経営の基礎知識を身につける
②物足りないと感じたら有料の医療コンサルタントに依頼する
このように、ご自身に合った医療コンサルタントの使い方を開業資金と調整をして決めてみてください。
信頼性の高い新専門医制度下の専門医になる
クリニックの開業準備として、専門医の資格を取得しておくことをおすすめします。
2018年度より新専門医制度が導入され、専門医の資格は一般社団法人日本専門医機構が統一的に認定することとなりました。新専門医制度で専門医資格を取得すると、「日本専門医機構が認めた専門医であること」を公式的に名乗ることができます。クリニックの広告に信頼の証である専門医をPRできれば、集患が期待できるでしょう。
「開業しよう」「自分のクリニックを持とう」と心に決めたら、新専門医制度下の専門医を目指すようにしてみてください。
新専門医制度の試験対策にはドクスタがおすすめ!
新専門医制度の専門医試験対策には「ドクターズスタディ」がおすすめです。ここからはドクスタのおすすめポイントについて紹介していきます。開業に向けた専門医資格取得を目指している方は必見です。
忙しい医師でも効率よく専門分野に特化した学習が可能
ドクスタではいつでも利用できる講義動画を利用して、多忙を極める医師でも隙間時間に学習することが可能です。また、使用されているテキストは、医療業界の出版社で最高峰の「医学書院」とドクスタが共同で開発したテキストです。専門分野に特化した確実な試験対策を実現することができるでしょう。
講師はDr.孝志郎
Dr.孝志郎は宮崎大学医学部卒の総合内科専門医です。持ち前の明るい人柄と試験の予想的中率の高さにも定評のあるカリスマ講師です。
国試直前には「LAST MESSAGE」と呼ばれる、全国の医学生およそ6,000人が参加するライブ講座が実施されます。ぜひ一度Dr.孝志郎の講義を体感してみてください。
まとめ
病院の形態によって年収の異なりは見られますが、勤務医の年収は約1,300万~1,500万円で、開業医の年収は3,000万円以上であることがわかりました。開業医へのキャリアアップは、年収アップだけではなく、自分の裁量でクリニックを経営できるというメリットもあります。しかし、メリットばかりではなくデメリットも理解し、対策を講じることが重要です。